不思議体験
夢か、現(うつつ)か 後編
=夢か、現(うつつ)か 後編=
「ヒロちゃん,警察の人がきてるの。赤い車のことを聞きたいって…」
は?
「通報がどうとかって、よくわからないから、あんた聞いてよ。」と母。
事情が飲み込めないまま玄関に出ると、
はたして、制服姿の若い男の警官がふたり、立っているではありませんか。
「夜分、申し訳有りません。」ひとりがこう切り出しました。
先ほど、この地区の住人を名乗る人からこんな通報があったそうです。
「自分の家の前に赤い車が停車しているため、家人が駐車場から車を出せずに困っている。
この車はいつもここに無断で停めているようだから、取り締まって欲しい。」
再三にわたって同じ通報があったそうで、急ぎ、確認に来たのだ、と言いました。
ところが、通報を受けた住所に行くと、そこには民家はありません。当然、通報した人物もみあたらないのです。
近隣を尋ね回った結果、ある家の人が
「この辺りで赤い車に乗っているとしたら、阿部さんちの娘さんだ。でも、あそこにはちゃんと車庫もあるし、無断で何回も路駐はしないだろう。」と、教えてくれたのだとか。
「もしかしたら、悪質ないたずらかもしれませんが、」とその警官はひどく恐縮しています。
当の私に心当たりがあるとすれば先ほどの妹の件だけなので、先ほどのことをそのまま伝えるしかありません。
「駐車っていっても、切り返しの間だけですよ。そのまま妹は帰りましたから。」
ふたりの警官は、それなら特に違法駐車に当たらないし、事件性もない。
何より通報者がいないのだから、たぶん「いたずら電話」だったのでしょう。と、言って
ほどなく立ち去りました。
何となく腑に落ちないまま、家に入ろうとすると、
それまで黙って私たちのやり取りを聞いていた母が、玄関の内鍵を掛けながら、こう言い出したのです。
「ヒロちゃん、ケイ(妹)ちゃん、今夜は来てないけど??」
「え??!だって…さっき!?」
「ケイちゃんが来たのは一昨日よ。研修で翌朝が早いからって、泊まらないで夜中にH市に帰ったのよ。いわなかったっけ?」
「え????!(きいてません)。」
「それに私がヒロちゃん起こしたのは、今が初めてよ。」
混乱する頭で夜を明かし、翌朝、まだ研修先にいた妹に連絡を取りました。
「ケイちゃん!!どうしよう、私、ウソついちゃったかも!!」
事情を説明すると、彼女がこう言い出したのです。
「あのさ、一昨日、夜中、実家に荷物取りに寄ったのよ。その時は急いでいたから、ガレージは使わないで路駐したの。
で、あのわき道でいったんバックで切り返してから通りに出ようと思ったんだ。あそこの道、狭くて暗いし、夜、バックで出るの怖いんだよね。
ぶつけたらイヤだなーって思ってたら、外からヒロ姉の声が聞こえた。
「オーライ、オーライ。」って。
で、バックミラーにヒロ姉が映ったのも見えたんだけど、すぐにいなくなったから声も描けられなかったんだよ。ごめんなさい。」
時間は過去から未来に向って一方通行で流れるものだと信じていますが、これではまるで時間軸がバラバラですね。
私が見たのはなんだったのでしょう。
それとも単に寝ぼけただけなのでしょうか?
了
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