不思議体験

Revision (旧タイトル:落ちる車)

Revision (旧タイトル:落ちる車)

録画したものを見直す事は可能です。コマ送りしたり、気に入った場面を何度も繰り返し再生したり、できます。
それと同じように、現実に起こることを事前に何度も見ることは可能なのでしょうか。
今回はそういうお話です。

Revision

私(阿部ヒロ)はいつもの道を、いつものように自宅に向っていました。
ふと横の立体駐車場を見ると、白い乗用車が上から落ちて来たのです。
?!!
思わず叫びそうになって、とびのきました。
次にくるだろう、衝撃音に耳を塞いで備えて目とじて身構えたのですが、いつまでたっても音はしません。
おそるおそる薄目を開けて地面をみました。
何も落ちていません。それどころか駐車場のシャッターは下りたまま、周囲は静まり返っていました。

この駐車場は4階立ての立体駐車場。不動産会社の管理になっています。ふだんの操作は、借り手がそれぞれパネル操作キーを持ち、各自で動かす仕組みでした。看板には24時間対応の緊急連絡先があり、必要ならそちらに電話をすると、管理会社から担当が駆けつけるのです。
通常の入庫の場合、まず操作パネルを開き、シャッターをあげます。次に自分のプレートを呼び出して車を入庫、ブレーキを引き、降車。再びパネルを操作して車の乗ったプレートを元の位置まで戻します。作動ランプが消えるのを待ってシャッターを下ろし、操作パネルを閉じて完了、というわけです。

寝不足で幻覚でも見たかと思いました。
ぼんやりと立体駐車場をみあげました。
するとまた、車が落ちて来たのです。まるで、そのシーンだけを巻き戻して再生しているかのようでした。

あり得ないことだと、妄想を振り払い、家路を急ぎました。

その途中、私とすれ違った白いセダンが一台。
前屈みになってハンドルを握っている女性となにげに目が合い、反射的にその車影を追って振り返りました。その白いセダンはあの立体駐車場の前で停車したのです。猛烈に気になりました。
ドライバーは30代くらいの女性。シャッターを開け、上階の自分プレートを呼び、入庫させると車を降りて、パネル閉めてそそくさと立ち去ったのです。一連のパネル操作を考えると、いやに素早い、と思いました。
かのセダンを載せたプレートは最上階を目指し、ソロソロと上昇していきます。するとなぜか、プレートが前後左右に揺れ始めたのです。さらに驚いたことには、上に乗っていたセダンが前に動き出したではありませんか。
まさか、ブレーキがかかっていない?!!
プレートの揺れはますます大きくなり、セダンはゆっくりと前にせり出し始めました。

そして、

…落ちたのです。

さっき見た光景と全く同じものが、スローで再生されているようでした。

次の瞬間ものすごい音がして、あり得ない形で車が地面を直撃していました。フロント部分を下に、セダンは逆立ちのような格好で地面に叩き付けられていたのです。

ドライバーの女性の姿はもう、どこにもありません。ちょうど配達途中に通りかかった商店街の八百屋のお兄さんが、セダンの持ち主を知っていて、すぐさま連絡に走りました。物音に驚いた付近の住人が、おそるおそる窓から顔を出しはじめています。
そして私は、駐車場のシャッターに書かれている連絡先の管理会社に連絡するハメに。

応対に出た係の人に状況を説明しながら、なんとも複雑な心境でした。

了。

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